白い小さな天使が舞い降りて
街中が真っ白になる夜
雪が降ると音を吸い取るのか急に街中が静かになります。
さっきまで聞こえていた遠くの教会の鐘の音や何となく聞こえていた町のざわめきがすーっと消えて、やがて静寂が訪れます。
夕方の冷え込みの中、家路に向かう人々はいつも以上に足早になり
今夜は降りそうだね…とか、積もらないと助かるんだが…などと言った
挨拶を交わしながら暖かそうな灯火の中に消えていきました。
大人達はさも雪が降ると困る様な顔をしながらも、心の中では子供達と同じように
今夜は絶対雪が降る!とワクワクしながら期待していたのかもしれません。
その証拠に、カーテンの隙間から時々外を眺めては自分の息で曇る窓を手で拭きながら
期待に満ちた顔で空を見上げていたのですから。
雪がちらつき出したのは子供達がお休みなさいを言ってベットに潜り込んだ頃。
ストーブの上に掛けられたヤカンがシュンシュンと湯気を上げている頃です。
最初に気がついたのは犬小屋の中で丸くなって寝ていた老犬でした。
次に気がついたのは店じまいをし始めたカフェの店主。
その後は誰の目にもわかる程の雪の量で、それはいくつもいくつも数えるのが怖いぐらいの沢山の雪の欠片が次々と空からフワフワと降りて来るのでした。
歩道に積もり始めた雪の上を歩くのは酔っぱらいや夜勤帰りの労働者達。
彼らの足跡が真っ白になった道上にぽつぽつと残されて行きます。
暫くするとその足跡も次々と降り積もる雪が隠してしまい、街灯の中に浮かび上がるキャンバルのように真っ白な世界がそこに有るだけでした。
犬小屋の上にも綿菓子の様な雪が積もり始めました。
明日は朝早くから子供達と雪遊びでくたびれそうです。
そう考えてゆっくり寝ようと老犬は考えましたが、やはりワクワクしてなかなか寝付けませんでした。



